雨上がりの景色を夢見て
「修二くんは、私とじゃなくて、貴史と仲が良かったって言った方が正しいです。貴史の事を心の底から慕ってたから。きっと、今も。ちゃんと話をするようになったのは、大人になって、再会してからです」

事実を伝えた。
昔から、今みたいに会うたびに話をしていたわけじゃない。貴史が一緒にいない時は、あいさつ程度。貴史が居なくなってからは、気まずくて、挨拶すらしなかった。

「そっか。…じゃあ、俺、安心するよ?」

「安心…?」

首を傾げると、高梨先生は苦笑いで、口を開いた。

「俺、やきもち妬いてたから」

「やきもち…ですか?」

聞き返すと、頷いて、私の髪の毛に指を通す高梨先生。

「…雛の色んな表情、仲が良かったなら、修二くんも見てたのかなって…」

恥ずかしそうな高梨先生に、私の胸がトクンッと音を立てる。

首を横に振って、否定すると、安心した様子で、ふっと微笑み、私の頭に口づけをした。

「さてと、雛、風呂入ってきたら?お湯沸いたと思うから」

立ち上がって、空になったカップとスプーンを手に取り、ゴミ箱にカップを捨てて、シンクにスプーンを置いた高梨先生。

私も、最後の一口を食べて、立ち上がった。

「そうします」

「体調は?具合悪くなって、お風呂で倒れない?」

「大丈夫です」

私の返事に安堵の表情を浮かべ、高梨先生は、私の手からスプーンを抜き取った。


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