雨上がりの景色を夢見て
「怖い?」

私の上から見下ろす高梨先生。いつもの優しい雰囲気に、私は緊張しながらも、少し安心できる。

「…大丈夫」

「もし、嫌だって思った時に、俺が止まらなかったら、頭リモコンで叩いていいから」

そう言って、ふっと笑う高梨先生につられて、私も笑ってしまった。

「大切に抱くから…」

その言葉に、私は素直に頷く。高梨先生は、私のおでこにそっとキスを落として、優しく私の体に触れて行く。

「雛…傷ちゃんと見せて」

えっ…

先生は、私が反応する前に、スルリと私の上半身を一気に脱がせる。

すぐに左肩の傷のことが頭をよぎった。

「…傷は「ん。大丈夫」

私の言葉を遮って、先生は指先で、そっと鎖骨付近の傷跡をなぞっていく。

触り方がいやらしく、私の中からゾワゾワした何かが込み上げた。

そう思っていると、生暖かい舌が、傷口に触れる。まるで、動物が自分の傷口を舐めるかのような舌づかい。

舌が触れるたびに、身体が震えた。












もう何度目だろう。開けたゴムの包装が、ベット横の棚の上に散らばっている。

2人だけの空間に、快感を表す甘い喘ぎ声と、吐息が響き続ける。

何度果てても、快楽を求め続ける身体は、じんわりと汗をかいている。

「雛、ずっと俺のそばにいて」

「うん」

いい大人が、眠気の襲ってくるギリギリまで、お互いの性欲の赴くまま、身体を重ね続けている。

本能的なものなのかもしれない。

腕枕をしてくれている高梨先生の頬にそっとキスをした。

先生も、私の頬にキスをする。

薄らと意識が夢の中に吸い込まれる中、

「愛してる」

そう耳に聞こえた。













んっ…

カーテンから差し込む眩しい光で目が覚める。

かすかに、食欲をそそる匂いがしていた。

ふと、身体にかけられているタオルケットの下は、何も纏っていないことに気がつき、昨日の出来事を思い出した。

鮮明に思い出される光景に、私の身体が熱を帯びる。

ガチャッ

「あっ、起きてた?」

「…はい」

昨日の夜の時とは全く違う、穏やかで爽やかな笑顔に、私の胸がドキッと跳ねる。

「…身体、辛くない?」

「…大丈夫です…」

微笑む高梨先生は、私の頭を優しく撫でた。

「朝食できたよ。シャワー浴びておいで」

私に、1枚のバスタオルを差し出してくれた高梨先生は、そのまま部屋を出て行った。




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