雨上がりの景色を夢見て
職員室に戻って、置きっぱなしだったスマホを開く。

母からメールが来ていて、開いて内容を確認する。

明日の夜、仕事終わりにすき焼きを食べに2人で家に来て欲しいという誘いのメールだった。

高級和牛を、仁さんの仕事の付き合いで貰ってきたらしい。

家に帰ったら、高梨先生に聞いてみよう。

スマホを閉じてカバンにしまい、私は一足先に家へと帰った。








家に着き、明かりをつけて手を洗う。冷蔵庫の食材を確認して、何を作ろうか考える。

野菜炒めかな。

貧血で倒れて以来、私自身も食事にはかなり気をつけるようになった。

何種類かの野菜を同じ大きさに切り、炒めて味付けをする。

味噌汁も具沢山にして、高梨先生がお代わりしてもいいように、少し多めに作った。

「ただいま」

「おかえりなさい」

すっかり定着したやりとり。最初は恥ずかしさがあったけれど、今は一緒にいれる時間の始まりを表す嬉しい言葉になっている。

「いいね、野菜炒め」

食卓につき、嬉しそうに手を合わせる高梨先生。エプロンを外して、私が席に着くのを確認すると、いただきますと言って、食べ始めた。

「そういえば、明日、すき焼き食べに来ないかって、母から連絡が来てました」

「金曜日だし、ご馳走になろうか。お義父さんとも飲みたいし」

すぐに快く返事をしてくれる高梨先生に、私はほっと胸を撫で下ろす。



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