雨上がりの景色を夢見て
何も言わずに、ゆっくりと歩く修二くんに歩調を合わせる。

何度か、貴史と修二くんの家の前まで行ったことがあったから、修二くんの家の前まで送り届けた。

『…雛さんは…平気ですか…？』

震える声で、そう言った修二くんの目からは、ぼろぼろと大粒の涙が流れた。

『…分からない』

その時の正直な気持ちだった。一言だけそう言って、私は修二くんに背中を向けて歩き始める。

隣に貴史がいない。待っていても、二度と現れることはない。

私の髪の毛を優しく触る指先の感触。

悩んでいても、見るだけで安心する笑顔。

『…っ……』

唇を噛み締めて、どう表現したらいいか分からない感情で胸が押し潰されそうになりながら、自分の家までたった数十分の道を、何時間もかけて戻った。








『歪んでいる』と言った修二くんの表情をもう一度見る。

バチッと目があって、お互いの間に微妙な空気が流れる。

ブッブッ

カバンの中からメッセージの受信を知らせる音が聞こえた。

「…あっ、ちょっとごめんね」

私は心の中で、ホッと息を吐き、カバンの中からスマホを取り出した。


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