雨上がりの景色を夢見て
先生は、私が話し終わると、私のおでこに軽くキスを落とした。

「うん、任せて」

そう言って、見せた笑顔がとても優しくて、温かくて、この人となら大丈夫、そう強く思えた。

「夏樹さん」

「うん?」

私の髪の毛を耳にかけて、耳たぶや頬に触れながら返事をする高梨先生を見つめる。

「私を好きになってくれて、ありがとう」

一瞬驚いた高梨先生だけど、すぐに嬉しそうに微笑んだ。

「それは、俺のセリフだな。雛に好きになってもらえて、本当に嬉しかったよ。叶わないと思っていたから」

「えっ…?」

そんな風に思っていたのが意外だった。私が思い出す高梨先生の姿は、結構積極的だったから。

「俺が入って行ける場所は、雛の心には、ないと持っていたから」

そうだったんだ…。確かに、半年前の私は、貴史のことで気持ちがいっぱいで、周りに目を向けていなかった。だけど、それを変えてくれたのは先生で、私の気持ちを軽くしてくれたんだ。

「…私の居場所を作ってくれたのが、夏樹さんですよ」

私の言葉に、先生は優しく微笑み、私の頬にキスをする。

キスをした後を指ですーっとなぞり、そのまま唇に指を這わせた。

触れた場所がジンジンして痺れてくる。

「…ふ…っ」

小さく声が漏れた瞬間、先生の表情が、悪戯っぽい笑顔に変わる。

「ここ…食べるよ?」

えっ…

指が離れると、先生の唇が、私の唇に噛み付くように重なった。

角度を変え、時には舌で私の唇を這う感覚に、頭がくらくらする。

するりと口の中まで舌が入り込み、私の舌と絡みついた。



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