雨上がりの景色を夢見て
「私、中川先輩と大和田さんのカップル、憧れてたんだよね。多分、私だけじゃなくて、他にもそういう人たくさんいたと思う」

「確かに。テニス部の人も、2人でいるとこ見かけると、つい目で追うって言ってたな」

同世代の子たちにも、そういうふうに映っていたのか。

「中川先輩、今幸せかな」

その言葉が、俺の胸にプレッシャーとしてのしかかる。

「だといいな。10年近く経つだろ?幸せになってて欲しいよ」

不思議に思った。おそらく、あまり近い存在ではなかった人達だろう。

だけど、こうやって、雛の幸せを願ってくれている。

雛自身は、自己肯定感が低いみたいだけど、周りの人は、雛のことを心配して、気づかないところで応援してくれている。

それは、雛自身の持っているものと、今までの雛の行いから来るものなんだと思う。

俺は汗を拭いて、2人に近づいた。

「雛の知り合いですか?」

近づいた俺の言葉に、明らかに驚く2人。

「あっ、はい。俺達、高校の時のテニス部で…」

今までの会話を気にして、動揺している2人に
微笑んで言葉をかける。

「気にかけてくれてありがとう」

「「えっ…」」

「安心して…雛は、幸せにしますから」

その言葉に、全てを察した2人は、顔を見合わせて、ほっとしたように笑った。

「すいませんでした。勝手に噂話してしまって…」

「いえいえ。いいんです。昔の彼女の様子が知れたし」

そう言って、俺は別の場所へと移動して、トレーニングを続けた。



< 423 / 538 >

この作品をシェア

pagetop