雨上がりの景色を夢見て
ランニングマシーンに乗って走りながら、さっき耳にした言葉を、頭の中で考える。

後を追おうとしてた…か。

確かに、初めて雛の口から貴史くんの話を聞いた時、雛は自分のせいなんだと責めていた。

自分ではなく、貴史くんが生きるはずだったんだと言って、泣きじゃくった。

罪悪感に押しつぶされそうになり、そういう行動に出てしまったのかも知れない。

どういった手段を選んだのかは分からないけれど、でも、今、雛が生きていてくれたことが、周りのみんなにとって、大きいことだったと思う。

…もう、そんな行動は、何があってもとらせない。

俺は、少し速度を上げて、無我夢中で走り続けた。










「…かなり、きつかったです」

着替えをして、ジムを出ると、隣を歩く雛が、伸びをしながら苦笑いで言った。

「続けていけば、身体が慣れてくるよ」

ふーっと息を吐いた雛は、キャップのツバをくいっと上げて、笑った。

その笑顔は、運動して汗を流した後だからなのか、とてもすっきりしている。

今日の彼女の服装は、ジーンズにスニーカー、ファーの着いた黒色のジャンバーを着ていて、とてもカジュアルだ。

同棲してから知ったのは、意外とカジュアルな格好もするということ。

そんな彼女は、いつもより少し幼い雰囲気に見えるけれど、結構俺は気に入っている。

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