雨上がりの景色を夢見て
「結構冷えますね」

「今日も雪が降るって言ってたからね。帰ったらお風呂入ってあったまろう」

「はい」

そんな会話をしながら、後数分で着く家までの道のりを歩く。

なんでもないことだけど、この時間すら幸せに感じてしまうのは、さっきの話が頭をよぎったから。

雛が居なかったら、こんな幸せな時間はなかった。

そう思うと、今の時間が、どれだけ貴重なものなのか、身に染みてわかる。

「今日の夕飯は何がいいですか?」

隣を歩く雛が、俺の顔を覗き込んで聞いてきた。化粧っけのない、ぱっちりした目が、俺を見つめる。

やっぱり、かわいいな…。

って、何考えてるんだ。

「寒いから、鍋にする?シメはラーメンで」

らしくないことを、歩きながら考えてしまい、慌てて答える。

「いいですね。確か白菜もありましたし、ポン酢もあったと思います。ラーメンあったかな…」

「じゃあ、家帰ってお風呂入ったら、スーパー行こうか。ラーメンもだけど、お酒も買いたいから」

「はい」

このような会話も、最近スムーズに出来るようになってきた。最初は、少しぎこちなさもあり、お互い遠慮しあっていたけれど、少しずつお互いのペースが分かってきた。

3月には、正式に夫婦になることが、少しずつ現実味を帯びてきたと思う。

結婚式は年度が新しくなってからの6月に行う予定だから、もう少ししてから、話を詰めていくことになる。

ウエディングドレス姿、綺麗なんだろうな…。



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