雨上がりの景色を夢見て
一度、会社に戻り、ある程度仕事が片付いたところで、会社を出た。

「さむっ」

暖房の効いた社内との温度差がすごくて、コートのポケットに手を入れる。

街のあちこちに、クリスマスらしい装飾や、イルミネーションが飾られている。

クリスマス、今年は家族とかな。

いい歳して、彼女もいない寂しいクリスマスになることを、きっと圭介にからかわれるんだろうな。

そういえば、この前、クリスマスプレゼントにゲームのカセットが欲しいって言ってきたな。

んー…甘やかしていいものか。それとも社会人の兄としての存在感を示す良いチャンスなのか。

圭介の2学期の頑張りを見てからにするか。

あれ…?

駅に向かって歩いていると、高梨先生らしき人が、角を曲がって俺の数十メートルほど前に現れ、前を歩き始めた。

隣にはキャップを深く被ったロングヘアの女性が歩いている。

妹さんにしては、背が小さい気がする…。

あっ、彼女か。高梨先生、彼女いたんだな…。

クリスマスの時期に、知っている人のこういう光景を見ると、さらに自分自身が寂しくなってくる。

そう思っていると、マンションの入り口へと入っていく高梨先生。

高梨先生って、この街に住んでたのか。

そう思いながら、マンションの前を通り過ぎる。

ふと、ジェラート屋さんの看板が目に入った。その瞬間、俺は、はっとして立ち止まった。

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