雨上がりの景色を夢見て
雛さんに、塩バニラアイス奢ってもらった日、あのマンションから雛さんが出てきたよな…。

知り合いの所に行っていたって言ってたけど。

もしかして、さっきの女性って雛さん?

いや、でも、雛さんってあんな感じの服着てたか?今日の午前中は、おしゃれなコートに、上品なマフラーをつけて、足元は…ブーツだったような。

だから、さっきの女性の雰囲気とはちょっと違う。

偶然か…?

でも、背丈って…あのくらいだし、雛さんだと言われれば、横顔が似ていたような…。

そもそも高梨先生と雛さんって、同じ学校だから、そういう関係になるものなのか?

雛さん、そういうところ気にしそうだけどな…。

でも、逆にいうと、同じ職場だから、親しくなるものなのか?

以前感じた、高梨先生が貴史くんと雰囲気が少し似ていることを思い出す。

もし、雛さんと高梨先生がそういう関係だったとしても、納得してしまう自分がいる。

きっと、雛さんを受け止められるのは、高梨先生のような人なんだと思う。

俺は、最初から、雛さんを受け止められる器なんて持っていない。

そんなの分かってたこと。

一瞬だけ、マンションの方を振り返る。

…雛さんだったんだろうな…。

ジェラート屋さんに入り、塩バニラを4つ注文して、持ち帰り用のドライアイスをお願いする。

「さむっ」

こんな寒い日に、なんで?

って圭介に言われるんだろうな。そんなこと言ったら、俺が2個食べてやる。

そう思いながら、かじかむ手にアイスの袋を持って駅へと向かった。

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