雨上がりの景色を夢見て

「…お墓参りに一緒に行きませんか。…貴史くんの」

心の中で、そのことだったのか、と冷静に受け止める。言い出しにくいお願いは、きっと貴史絡みのものだと予想はしていた。

そして、貴史の命日が、あと1ヶ月半ほどに迫っていた。

私は、貴史の命日のお墓参りに、いつも1人でこっそりと訪れていた。それも絶対に人に会わないように、早朝にひっそりと。

貴史の家族と会うことが、いまだに怖い。どんな顔をして会えばいいのか、なんと言葉を交わせばいいのか、考えれば考えるほど分からなくなる。

だって、貴史がいなくなったそもそもの原因は、私だから。

私が

貴史を

貴史の家族から

奪った。

その事実は、ずっと消えることはない。