雨上がりの景色を夢見て
「雛ちゃん、リラックスしてね」

クリーム色のパーティードレス姿の夏奈さんが、私の所に近づいてきた。

「リボン解けそうよ」

夏奈さんはそう言うと、私の腰の横で結んでいたリボンを整えてくれた。

「ありがとうございます」

「どういたしまして」

ニコっと笑う夏奈さんは、やっぱりすごく綺麗で、思わず、ドキッとしてしまう。

「夏樹くん、雛ちゃん」

前方から近づいてきたのは、ほろ酔いの藤永先生。

人目も気にせず、後ろから夏奈さんの首に腕を回して体を寄せた。

「先生、人前ですよ?」

「いいの、いいの」

イチャつく2人に、私と高梨先生は顔を見合わせる。

幸せオーラが溢れている夏奈さんと藤永先生を見ていると、こっちが照れ臭くなってくる。

「今度は2人の番ね。夏樹、雛ちゃんの希望を叶えるのよ?」

「分かってるって」

「雛ちゃんも、いっぱいわがまま言うといいよ」

藤永先生は、優しく微笑んで、私を見る。

「うんうん。藤永先生、もっと言ってください。雛、全然わがまま言わなくって。もっとこうしたい、あーしたいって希望言ってほしいくらい」

隣で頷く高梨先生は、この機会に私の要望を聞き出そうとしている。

でも…

「結婚式できるだけで幸せだから…」

本当に、そう感じているから、これ以上わがままがないのだ。

「披露宴もやろうって提案してるけど、中々首を縦に降らないんです」







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