雨上がりの景色を夢見て
今がチャンスと言わんばかりに、高梨先生が、困ったように藤永先生に相談する。

「まあ…俺たちも披露宴はしなかったから、なんともいえないけど…。職業柄、職場の人を大人数、長い時間も拘束できなかったからね。急患も来る可能性があるから」

「そうそう。だからね、こうやって、空き時間見て、自由に出入りできる立食パーティーにしたの。…せっかくだし、披露宴で、カラードレス姿見てもらったら?」

笑顔で優しく諭す夏奈さんに、少しだけ気持ちが揺れる。

だけど…

「大勢の人に注目されるのが…」

「もう…雛ちゃん、控えめね。〝私のドレス姿、綺麗でしょ?〟ってくらいの気持ちで堂々としてれば大丈夫。雛ちゃん、美人さんなんだから」

「…無理です…」

首を横に振ると、夏奈さんは苦笑いで高梨先生に視線を移す。

「あとは、2人で時間かけて話し合うのね」

「…頑張る」

夏奈さんは、高梨先生の肩をぽんっと叩くと、今度は藤永先生と、職場の人のところへ向かった。

「…夏樹さんは…披露宴したいんですね?」

「…せっかく来てもらえるなら、俺の奥さんこんなに綺麗でしょって、見せたいし。…まあ、それもあるけど、今まで支えてくれた人に、今こんなに幸せなんですって、伝えたい」

先生の気持ちは、すごくよく分かる。だけど、大きな会場の、しかも正面で、長時間見られるのは、私の気持ちがついていかない。

「またゆっくり話そう」

「はい…」

私は、手に持っていたグラスに入ったシャンパンを、グイッと喉に流し込んだ。



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