雨上がりの景色を夢見て
3人の話が弾んでいる様子に、私の知らない高梨先生だと感じた。

気にすることじゃないのに、疎外感を感じてしまう自分に嫌気が差す。

こんな気持ちのまま、高梨先生の所へ戻りたくないな…。

そう思いながら、フルーツを食べ終わり、お皿を片付けて、今度は赤ワインの入ったグラスを手に取る。

これで、最後の一杯にしよう。ほろ酔い気分がちょうどいい。

空いている椅子に座ろうと、向きを変えた時、

ドンッ

パシャッ

「あっ…ごめんなさい!」

身体がぶつかった拍子に、グラスの中の赤ワインが、男性のワイシャツにかかってしまった。

「…いえ、私の方がよそ見をしてしまっていたので。あっ、あなたの服にもはねてしまっています」

自分のことより、私のパーティードレスについたわずかなシミを気にする男性は、あたりをキョロキョロと渡して、ついたての反対側にある洗面台のところまでいくと、すぐに戻ってきた。

手には濡らしたハンカチを持っていて、私に差し出す。

「私の方はあまり目立たないので。それよりも、ワイシャツの方を早く拭いた方が…」

私は紺色のワンピースだから、そんなに目立たない。だけど、男性のワイシャツにははっきりとワインの色が染みている。

「えっ…でも」

「…上から拭くよりも、ワイシャツの裏から濡れたハンカチを押し当てて、上には乾いたハンカチを被せて吸い取れば、ちょっとはとれるかもしれません…」

私は、乾いたハンカチをハンドバックから取り出して、差し出しながら、そう説明した。

「ありがとうございます。ちょっとお手洗いの方で試してきます」

男性は丁寧に頭を下げると、お手洗いへと向かった。

やってしまった…。よりによって、赤ワインをかけてしまうなんて…。

戻ってきたら、クリーニング代渡そう…。

小さくため息をついて、チラッと高梨先生達の方へ視線を向ける。

さっきよりも人数が増えていて、プチ同窓会のような雰囲気になっていた。



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