雨上がりの景色を夢見て
隣にいる男性の肩をポンポン叩いて、大声で笑っている高梨先生の意外な姿に、内心驚く。

だけど、よく考えれば、以前に見せてもらった写真にはあの表情が写っていたと思い出した。

時間が遡ったみたい。

ふーっと息を吐いて、お手洗いの方を見たけれど、まだ戻ってくる気配はない。

私はついたての近くにあった長椅子に座って、壁に背中をペタッとくっつけた。

ひんやりとした感覚が、酔った身体を冷やしてくれて心地よい。

高梨先生、楽しそうだったな…。

私といる時は、あんな風に笑ったりしないけれど、いつも無理をしているのでは、と一瞬頭をよぎる。

先生は、どっちが楽なんだろう。

ズキンッ

ズキンッ

頭…痛い。

お酒、飲み過ぎではないんだけどな…。

小さな痛みが、少しずつ大きくなっていき、痛みの波が来るたびに、自分でも表情が歪むのを感じて、無意識に頭を手で抑える。

ガチャッ

「あっ、ハンカチありがとうございました。…って、顔色悪いですよ?」

お手洗いから出てきた先ほどの男性は、私を見て、慌てて目の前にしゃがんで、私の顔を覗き込む。

「…失礼」

そう言って、私の手をとって、指を一本一本見る。

この手際の良さ…もしかして…

「お医者さん…ですか?」

「はい。藤永の同期です」






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