雨上がりの景色を夢見て
「…貧血持ち?」

私の手首で脈を測りながら尋ねたお医者さんは、もう一度私の顔色を確認する。

「…はい」

「…私は、橘病院の津川と言います。あなたは?」

「…中川です」

ズキンッという痛みが、ガーンという痛みに変わり、顔をしかめる。

少しずつ気持ち悪さも出てきて、以前倒れた時と同じような状況になってきているのがわかった。

「ん。中川さん、一緒に来た人いますよね」

そう言って立ち上がった津川先生は、みんなが楽しく歓談している方へ足を進めかけた。

だけど、それを私は津川先生の手首を咄嗟に掴んで、拒む。

「えっ…?」

「…楽しい時間邪魔したくないんです…」

そう言葉にした瞬間、急に動いたからなのか、視界がぐにゃっと歪む。

遠のく津川先生の声。

高梨先生も気がついちゃうんだろうな…。また…私、迷惑かけちゃったんだ。

先生、あんなに楽しそうだったのに。

私…やっぱり先生の重荷になってる…。

視界が真っ暗になって、私の意識が途切れた。






んっ…

「…雛」

耳に届いた高梨先生の声。ゆっくりと目を開けると、真っ白な天井が見えた。

病院だ…。

顔を覗き込む心配そうな表情に高梨先生に、私の胸がぎゅっと締め付けられる。

「…っ…ごめんなさい。…っ…せっかくの楽しい時間だったのに…」

申し訳なさで、私の目から涙が溢れる。













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