雨上がりの景色を夢見て
「大丈夫。今日の主役は藤永先生と夏奈だろ？」

私の頭を優しく撫でてくれる先生の手に、自分の手を伸ばしかけて、動きを止める。

「…また、点滴…」

「うん…」

悲しそうに返事をする高梨先生。私は、そんな先生に冗談混じりに、言葉をかける。

「食生活、夏樹さんの美味しいご飯で改善してたんだけどな…」

私の言葉に、なぜか気まずそうな表情を見せた高梨先生。私の胸がドクンと鼓動し、動揺する。

「…そのことなんだけど…津川先生…から話があるんだ」

「えっ…？」

「…ハンカチ、ありがとうって言ってたよ。今、呼んでくるから待ってて」

切なそうに微笑んだ高梨先生の表情が、頭から離れない。

津川先生の話って…なんだろう。内科の先生だったのかな。

すぐに、白衣姿の津川先生と高梨先生が戻ってきて、高梨先生は、津川先生とベットを挟んで反対側に立った。

上体を起き上がらせた私の肩に、優しく手を添えてくれる高梨先生。

「中川さん、あらためまして、心療内科医の津川と申します」

心療内科医…？

私は思わず、高梨先生の顔を見上げる。先生は、優しい表情で、小さく頷いた。

「…倒れる直前の、中川さんの不安そうな表情が気になって、高梨さんから、貧血のことをお伺いしたときに、深いところまで質問させていただいたんです」

深いところ…？

「…雛のためだって自分にも言い聞かせて、貴史くんのこと、お父さんのことを話した。勝手に…ごめん」

先生の悲しそうな表情が、私のことを話す時の葛藤を物語っている気がした。



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