雨上がりの景色を夢見て
「…雛、ごめん。そこまで追い込まれてたなんて…」

「ううん…。夏樹さんが居てくれたから、平気だったんだと思う」

本当は、きっと倒れてしまうくらいのストレスはもう少し頻繁に感じていたんだと思う。それでも、これまでどうにか出来ていたのは、高梨先生がそばに居てくれたから。

「もし…差し支えなければ、このまま私に担当させてほしいのですが…いかがですか?」

津川先生の提案に、私はすぐに答えを出した。

「…お願いします」

私の過去を、すでに聞いていることから、新しく他の病院で事情を話すよりも、伝わりやすいと思ったから。

「来週、一度診察に来ていただきたいのですが」

「…点滴終わる前には、予定を確認してお伝えします」

まだたっぷり液の入った袋を見上げて伝えると、津川先生は、穏やかに笑って、病室を出ていった。

パタンと扉に閉まる音が、病室に響く。

ベットに腰掛けた高梨先生は、私の前髪に触れて、寂しそうに私を見つめる。

「…俺、話に夢中で、雛の体調が悪くなったの全然気がついてなかった…ごめん」

「謝ることじゃないですよ…。たまたまそうなっただけです」

そう言ったけど、高梨先生は申し訳なさそうに私を見つめている。

先生の表情に、私は先生を困らせてばかりだと思い、胸が苦しくなる。

貴史のこと

父親のこと

心理的なこと

私と結婚することで、高梨先生の負担が大きくなってしまう気がして、私は本当にこのまま高梨先生と一緒にいていいのか不安になる。



< 438 / 538 >

この作品をシェア

pagetop