雨上がりの景色を夢見て
「…もしも、何かがあって、仕事までも辛くなった時は、相談して。来年度は、きっと別々の職場になってしまうから。色々な働き方だってあるし、思い切って、専業主婦になる選択肢だってあるんだから」

「はい…」

先生が、私が無理をしないように、あらかじめ伝えてくれたことがとてもよく分かった。

その気遣いが、今後、私が壁にぶつかってしまった時の救いの場所に変わるのかもしれない。

そういう場所があることは、私の心の中の強みになるのだと思う。

「雛、お腹空いてる?」

「えっ…あっ…はい」

パーティーであまり食べなかったからか、言われてみれば、お腹がぺったんこになっていた。

そして、タイミングよく、先生のお腹が鳴る。

「俺も」

先生の照れ臭そうな笑顔に、私もつられて笑顔になる。

「帰ったら、ラーメン作って食べよう。卵半熟にしてさ」

「はい」

この些細な会話に幸せを噛み締めることができて、心が温かくなっていく。

点滴が終わり、診察の予約をしてから、私達はタクシーに乗って家へと向かった。

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