雨上がりの景色を夢見て
「あっ、半熟卵作るの忘れた」

ラーメンを盛り付けている時に、卵を茹でていなかったことに気づき、はっとした。

「じゃあ、直接落としましょう」

雛は、俺の手からラーメンの汁が少量残った鍋をとると、火にかけて、卵を落とし入れる。

少しずつ白く包まれていく様子に、思わず感心した。

「なるほど、そうやるのか」

「ゆで卵を作るほどの体力がない時に、よくこうやってたんです」

雛は、そう言って恥ずかしそうに笑うと、火を止めて卵とスープを器に入れた。

「寒い日のラーメン最高」

俺は、刻んだネギを盛り付けて、二つの器をテーブルへと運んだ。

「「いただきます」」

声が揃って、お互いに目を見合わせてクスッと笑う。

今、目の前の彼女が、こうやって些細なことでも笑ってくれるのがすごく嬉しい。

「雛、好きだよ」

ラーメンを口に運ぼうとしていた彼女に、前触れもなく言葉をかける。

彼女は、驚いた表情で、俺を見て、すぐに顔を赤らめる。箸からは、つるんと器にラーメンがおちた。

「…急に言われると…」

「驚いちゃうよな。…でも、雛、好きだよ」

もう一度、愛おしい彼女に想いを伝える。

今度は、恥ずかしそうに、顔を真っ赤にして困ったように笑った雛。

その姿が、すごく可愛らしくて、俺の胸が大きな音を立てて鼓動する。





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