雨上がりの景色を夢見て
「待って…のぼせそう…」

「…わかった…」

そう答えて、私から手を離す藤永先生に、ほっと胸を撫で下ろす。










「…雛ちゃん…大丈夫かしら」

ベットで腕枕をしてもらいながら、藤永先生に尋ねる。

「貧血は、大丈夫だと思うけど…」

貧血は…?

私は、先生の言葉が引っかかって、思わず起きあがって、先生を見下ろす。

「雛ちゃん、他にどこか悪いの…?」

痩せすぎてるし、もしかして大きな病気が見つかったとか…?

私の様子に、藤永先生も起き上がる。

「…津川の見立てだと、心理的な面で疾患がある可能性が高いって」

「えっ…」

藤永先生の言葉に、私は驚いて固まった。だけど、これまでの雛ちゃんの周りで起きた出来事を考えると、納得してしまう部分があることに気がつく。

「津川は、心療内科医だから、今日会場で会って、すぐに違和感は感じたみたい」

「…そう。雛ちゃん、1人でずっと抱え込んできたの。色んな事をよ?報われてほしいわ…」

「…きっと、大丈夫。夏樹くんだっているんだから」

藤永先生は、優しく答えると、私の腕をグイッと引っ張って、私を先生の胸元に引き寄せた。

「…私も力になりたい」

「何かの時に、話を聞いてあげるといいよ。誰かに話すと、気持ちが楽になるから」

私は、藤永先生の言葉に、頷いた。


< 449 / 538 >

この作品をシェア

pagetop