雨上がりの景色を夢見て
「…やっぱり、私自身が子どもが居たらいいなって、考えて、選択肢広げたくて、資料を貰ったの。でも、結構要件がハードルになってって…たとえば、ここ」

そう言って、手書きで囲んであるところを指差した夏奈さん。

そこには、両親ともに、45歳未満が望ましいとの記載があり、さらにその下には結婚して3年以上経っていることと書いてあった。

「今、圭吾さん45歳なの。3年後だと48歳。見た目は若いけど、身分証明書は誤魔化せないわ」

冗談混じりにそう言った夏奈さんだけど、すぐに悲しそうな顔をした。

「…藤永先生はご存知なんですか?」

「うん…。一緒に資料取りに行ったの。でも、望ましいっていう書き方だから、可能性はまだあるって、前向きに考えてくれてる…」

そうだったんだ…。

「いい方向に向かうといいですね…」

当たり障りのない返答しか出来ない自分が情けない。

「ごめんね、しんみりさせちゃって。だからね、今日は雛ちゃんに来てもらえてほっとしたわ。1人だと考え込んじゃうんだもの」

そう言った夏奈さんはパンフレットを棚に片付けた。

「そういえば、今日職場のみんなに、結婚の報告だったんでしょ?みんな驚いてたでしょ」

振り返った夏奈さんは、すっかりいつもの明るい表情に戻っていた。



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