雨上がりの景色を夢見て
「ねえねえ、告白したのって、高梨先生なんでしょ?」

安藤先生が、隣に来て、楽しそうに聞いてきた。後ろのテーブルを見ると、都築先生は、テーブルに伏せて、うとうとと眠りかけている。

「…中川先生が言ってた?」

「ううん。遠慮して答えてくれなかったんだけど、雰囲気的に、高梨先生なのかなって。中川先生、今日の飲み会で返事に困ると、いつも高梨先生の背中見てたのよ?」

「そうなの?…まあ、俺からだよな、どう考えても」

雛の視線には、気がついていなかった。俺も結構いろんな先生に質問攻めにあってたからな。

「だよね。なんか安心した」

安藤先生は、サワーをゴクっと一口飲む。

「何が?」

「中川先生、あんなに可愛いのに、浮いた話聞かなかったじゃない?だから、変な男に後々引っ掛からなきゃいいなって内心、心配してたのよ。きっとこれ、近所のおばちゃん目線ね」

あははと笑い飛ばした安藤先生だけど、その気持ちはなんとなく理解できる。

「そんな心配をよそに、高梨先生が、さらっと貰っちゃうんだもん。びっくりよ」

俺の肩をバシバシ叩く安藤先生。力強くて、ちょっと痛い。

「中川先生のこと、ちゃーんと幸せにするのよ?」

「うん。分かってるさ」

そう即答すると、安藤先生は、今度は一発、俺の背中をバシンっと叩いた。

「やだ、もう。高梨先生の表情緩みすぎー」

「そんな?」

「幸せ者め!」

ケラケラと笑って、まだ半分残っている俺のグラスに、焼酎を足す安藤先生。

今日は、結構飲んでるな、俺。まあ、明日休みだからいいか。

雛も夏奈と一緒なら安心だ。きっと雛は俺に気を遣ってくれたんだと思う。

明日、起きたらすぐに迎えに行こう。

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