雨上がりの景色を夢見て
「…じゃあ、そうしますか。あっ、雛さん飲み物何にします?」

空いたグラスをテーブルの通路側に置いて、私にメニューを差し出す修二くん。

私は、メニューを受け取って、ドリンクメニューのページを開いた。











一体、私がお手洗いに行き、母と電話をしている間に何が起きたのだろう。

数分前まで、酔ったそぶりもなく、饒舌に話をしていた修二くんは、テーブルにうなだれていて、完全に酔っ払いの姿になっていた。

「…修二くん…?」

「…あー、おかえりら、さい」

私の声に、真っ赤になった顔を上げて反応した修二くん。

テーブルの上には、私が席を立つ前にはなかった、冷酒のグラスが空になって置いてあった。

そういえば、席を立つ数分前に、有名な冷酒だと言って注文をしていた。それを飲んで、こうなったとしか考えられない。

「…帰りましょう」

まだ口をつけていない、私の分の氷水を修二くんに渡した。

「えーっ、もっと、飲み…ヒック…ましょうよー」

私の差し出した水を一気飲みしたと思ったら、私の服の裾を掴んで、少し面倒くさい絡みをしてきた修二くん。

私は、小さくため息をついて、さりげなく修二くんの手から服の裾を引き寄せた。

「…帰れなくなったら困るのよ?どうする?タクシー呼ぶ?」

テーブル横のボタンを押して、お会計のために店員さんを呼ぶ。

「…歩け…ます」

修二くんは、私がボタンを押したのを見て、しぶしぶカバンの中からお財布を取り出した。

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