雨上がりの景色を夢見て
「新しい学校にはいつ挨拶に行くの?」

「明後日…月曜日です」

「そう。働きやすい職場だといいわね」

夏樹が一緒じゃないからこそ、雛ちゃんの職場での様子はなかなか耳に入ることがなくなると思う。

夏樹だけじゃなくて、私も少し心配している。

まだ、定期的に通院が続いている雛ちゃんが、無理をしてしまわないか心配になる。

「はい。でも、私は保健室にいることがほとんどなので、生徒の雰囲気がどんな感じなのかなっていう方が不安です…」

そう言って、少し不安の混じった笑顔を向ける雛ちゃん。

「何かあったら、相談してね」

「はい」

珍しく、素直に返事をした雛ちゃんに、きっと今表情にでた何倍もの不安が心の中にあるのだと察した。

夏樹…気がついてるわよね…。後でちらっと聞いてみよう。

「夏奈さんも、私が力になれることがあったら言ってくださいね…?」

えっ…

「…ありがとう」

雛ちゃんの言葉に、内心驚きながらも、笑顔でお礼を言う。

あっ…昨日の事かな…。

おそらく、特別養子縁組の件だと思い出して、サンドイッチを食べる雛ちゃんを見る。

「気を遣わないように、今言ってもいい?」

「…?」

雛ちゃんは不思議そうに私の目を、綺麗な瞳で見つめる。

< 470 / 538 >

この作品をシェア

pagetop