雨上がりの景色を夢見て
「そっか。あたふたする夏樹くん、見てみたいな」

藤永先生は、楽しそうにそう言った。雛ちゃんは、藤永先生の言葉におかしそうに笑っている。

「最近、体調はどう？」

「今のところ安定しています」

「なら良かった。環境も変わるから、不調を感じたら、遠慮しないで津川先生の所に行くんだよ？」

「はい」

私の心配していたことも踏まえて、藤永先生が話してくれて、ほっと胸を撫で下ろす。

いれたコーヒーとサンドイッチを藤永先生の前に置いて、私も隣に座った。

「俺が好きなサンドイッチ。ありがとう」

藤永先生が嬉しそうに笑ってくれて、私の心が温かくなる。

「…藤永先生」

「ん？」

サンドイッチを頬張った藤永先生が、雛ちゃんを見る。

「先生がわかる範囲で、正直に答えてもらってもいいですか？」

雛ちゃんは真剣な眼差しで、藤永先生に尋ねる。

藤永先生は、コーヒーでサンドイッチを流し込み、雛ちゃんを見て、頷いた。

私は、いない方がいいのかなと思い、席を外そうとしたけれど、それに気がついた雛ちゃんは、

「夏奈さんにもいて欲しいです」

と言った。

意外な言葉に驚きながら私は座り直して、雛ちゃんの次の言葉を待った。



< 472 / 538 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop