雨上がりの景色を夢見て
「…夏奈さん、妊娠の話になってしまいますが…いいですか?」

私は、雛ちゃんの言葉に、目を見て真っ直ぐ頷いた。

私の様子に安心した雛ちゃんは、もう一度藤永先生を見て頷く。

「藤永先生…、PTSDの私でも、ちゃんと育児できますか?」

あっ…

雛ちゃんの言葉に、雛ちゃんが夏樹との新しい家庭を築いていく上で、病気がそういったところに繋がることを、私は気づいていなかったと思った。

でも、それを、藤永先生に尋ねた雛ちゃんは、子どものことを前向きに考えているのだと伝わって来た。

「…はっきりとは言えないけど、雛ちゃんみたいに症状に苦しみながらも、それとは別に子どもを望んでる人はいる」

藤永先生の話に、雛ちゃんは頷く。そんな雛ちゃんに、藤永先生は優しい口調で言葉を続けた。

「だからこそ、助産師や保健師との連携が重要になってくるんだと思うよ?今は色々な機関のサポートを受けられるから、津川先生や産婦人科医と相談しながらって感じになっていくんだ」

「雛ちゃんは、今は治療に関わって、確か薬は飲んでいないんだよね…?」

「はい。津川先生のお話だと、心理療法でいい方向に向かってるから飲まないで少しずつ治療していこうって」

「うん。なら、減薬の影響のことは考える必要はないかな。さっき言ったいろんな機関と連携とっていけば大丈夫だよ。夏樹くんだっているんだからね」

雛ちゃんはほっとした様子で、頷いていた。目が少し潤んでいて、藤永先生の答えに緊張していたのだと伝わって来た。


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