雨上がりの景色を夢見て
お会計を済ませて、外に出ると、生暖かい風が吹いていた。日中も気温が上がっていて、まだ4月下旬だというのに、夏のような天気だった。

駅に向かって歩きながら、ちらっと腕時計で時間を確認する。最終電車には余裕で間に合いそうだ。

修二くんは酔いが回るのが早いけれど、覚めるのも早いようで、歩いているうちに少しずつ呂律がしっかりしてきた。

「…今日は、雛さんと話せて…嬉しかったです」

ほんのりまだ赤い顔で、笑顔を見せた修二くん。

その笑顔に、私は正直、ほっとした。

「雛さんはゴールデンウィークは予定あるんですか?」

今年のゴールデンウィークは真ん中に平日が挟んであり、飛び飛びの連休。

「前半は、妹の宿題見て、後半は家族で温泉旅行だったはず」

昨年、仁さんの会社の忘年会でのビンゴ大会になぜか菜子も参加して、そこで見事に引き当てたのが温泉宿の宿泊券だった。

家族旅行に行ったことがなかったため、気恥ずかしくて断っていたけれど、4名様までの文字を見た菜子から、半ば強引に誘われて、私も行く事になった。

「いいですね、温泉」

「修二くんは?」

「俺は、仕事です。平日に出張が入ってて、遠方なので移動で潰れちゃいました」

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