雨上がりの景色を夢見て
「大変なのね。身体壊さないようにね」

私の言葉に、修二くんは笑顔で頷いた。そして、ごそごそとカバンの中から、手のひらサイズの小さな箱を取り出した。

「これ、今日のお礼です」

そう言って、私の前に差し出された箱は、お洒落な包装紙で包んであった。

「チョコレートなんですけど、多分、雛さんが好きな味だと思います」

私が好きな味?

疑問に思いながらも、折角だから、と包みを受け取る。

「ありがとう」

「じゃあ、また、連絡しますね!」

修二くんは、昔の子犬のようなキラキラした笑顔でそう言うと、さっきまで酔っ払っていたとは思えないような、軽快なスキップをして、人通りの少なくなった道を帰っていった。

元気になって良かった。

けれど、貴史のお墓参りに一緒に行くことになっていたことを思い出して、少し複雑な気持ちになった。

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