雨上がりの景色を夢見て
「そういえば、養護教諭の石田和子先生って覚えてる?」

石田和子先生…

あっ…

私の頭の中に、いつも微笑んでいた石田先生の顔が浮かんできた。

あの事故の後、しばらく保健室登校だった私をいつも見守ってくれていた先生。

先生のお陰で、私は将来やりたいことが決まって、少しだけ顔を上げることができた。

「…とてもお世話になった先生なの」

「…うん、そっか。石田先生の旦那さんが、4月から赴任するんだ。奥さん…石田和子先生、雛が同じ職業についてくれて嬉しかったって言ってるらしいよ」

その言葉を聞いて、私の胸が、ぎゅーっと締め付けられる。

あっ…そういえば…

「私も、赴任先で笹村先生にお会いしました。〝よろしくお伝えください〟と伝言預かりました」

「あっ、笹村先生いたんだ?若かりし頃の、俺の失敗談、色々知ってるからなあ」

そう言って、照れ臭そうに頭を掻いた高梨先生が、少し新鮮で、ふふっと笑ってしまった。

「笹村先生、夏樹さんのことすごく褒めてましたよ?」

「あっ、そう?いや、でも笹村先生には色々教えてもらったよ」

懐かしそうな高梨先生は、そう言いながら、キッチンの方に目を向けた。

「あっ、餃子だ。俺も包むの手伝っていい?」

「はい」

2人で並んでキッチンで夕飯の準備をする。この時間が、照れくさいけれど、とても好き。

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