雨上がりの景色を夢見て
私の返事を待っている高梨先生の様子を伺う。目が合うと、穏やかに微笑んで、私の毛に触れた。

「…沈黙が、答えかな…?」

頷くと、高梨先生が切なそうな表情で微笑み、そっと私の頭を先生の胸にくっつけた。

「…生きててくれて、本当によかった」

その言葉に、キューッと胸が締め付けられる。

そうだと思う。あの時、そのまま死んでいたら、私は今の幸せを感じることはなかった。

教師になることも、高梨先生に出会うこともないままだったと思うと、あの時、救ってもらえて、素直によかったと思える。

だから…

「…明日の夜、外食しませんか?」

「えっ、うん。いいけど、珍しいね、雛からそう言うなんて」

ちょっと驚いた高梨先生に、私は目に溜まった涙を拭って微笑んだ。

「…私のことを、助けてくれた人のお店に行きたいんです。…今幸せだって、伝えたいんです」

「…そういうことなら、なおさら行かないとね」

高梨先生は私の頭をポンポンと叩いて、立ち上がった。

「そろそろ餃子焼こうか。ビールも進みそうだ」

私は飲み掛けの缶ビールをテーブルに置いて、高梨先生の後ろをついていく。

大きめのホットプレートを取り出して、準備を始める高梨先生を手伝い、2人で餃子を焼き始めた。



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