雨上がりの景色を夢見て
「そういえば、今日清水と近藤と帰りに会ったんですが、英語の小テスト難しすぎだとブーイングされました」

頭をぽりぽりかきながら苦笑いをした高梨先生を見て、小テストが難しかったと保健室で話していたことを思い出した。

「近藤さんが、落ち込んでましたよ?」

「いや、近藤はまだいい方です」

「そうなんですか?」

半分取れた気しないと言っていたけれど、それは自信がなかっただけで、意外と良かったということなのだろうか。

そう思った時、高梨先生の言葉で、そう言うわけではないことを悟ることになる。

「2年生になったので、ちょっと難易度上げたんです。そしたら見事に、平均点が半分以下になってしまいました。いきなりハードル上げすぎたようです。でも、来年は受験生ですし、いま現実を知っておいた方がいいんです。…ということにしましょう」

高梨先生はそう言い切ると、「ハハハ!」と明るく笑った。

なるほど。平均点が半分以下だったから、近藤さんはまだいい方だということなんだ。よっぽど難しい小テストだったに違いない。

ブッ、ブッ

デスクに置いたままのスマホから、メッセージの受信を知らせる振動が伝わってきて、スマホを手にしてメッセージを確認する。差出人は母だった。

『今日の夜ご飯、食べにいらっしゃい。すき焼きよ。菜子も会いたがってるわ』

『ありがとう。19時半には行けそう』

すき焼きを食べたいからではなく、菜子の名前が目に入り、私はすぐにメッセージを返信した。

菜子は私が高校3年生の時に生まれた歳の離れた8歳の妹。歳が離れすぎていて、喧嘩なんてすることもなく、ただただ可愛いくて仕方ない。




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