雨上がりの景色を夢見て
「…っ…仁さん…そんなこと言ってたんですね」

仁さんは、普段、口にしないけれど、私のことを理解してくれていたんだ…。

「兄貴さ、雛ちゃんの結婚、すごくすごく、喜んでたよ。デレデレになっちゃって、こっちが恥ずかしくなるくらい」

賢さんの言葉に、私の頬に溢れ出た涙がつたった。

「…っ…賢さん、ありがとう…。仁さん…ううん、父にも直接お礼を伝えます」

頬を伝う涙を拭って、賢さんに自然に出た笑顔でお礼を言う。

「うん。雛ちゃん、幸せになるんだよ」

「はい。…今でも十分すぎるくらい幸せです」

「ふふっ。そうみたいだね」

賢さんはそう言うと、丁寧に頭を下げて厨房へと戻っていった。

「…雛」

涙をハンカチで拭いていると、穏やかな口調で名前を呼ばれた。

顔を上げると、高梨先生が、今まで見た中で、1番幸せそうな笑顔を見せていた。

「…すごく綺麗だよ」

えっ…

「幸せで溢れてる涙…雛によく似合ってる」

そんな恥ずかしい言葉をこんな公の場で言われたことがなくて、私の顔が一気に熱くなる。

「俺、幸せ者だな…」

照れ臭そうにそう言うと、小鳥遊先生は私にデザート用のフォークを手渡した。

「どれからにする?」

「…ショートケーキにします」

そう言うと、小さなショートケーキを半分にして、フォークですくうと、私の口元に持ってきた。

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