雨上がりの景色を夢見て
予想外の行動に、私の体が固まる。こんな人前で?

お客さんは、もうこっちは見ていないけれど、やっぱり気になる。

「…結婚式の練習」

「…練習って言っても…」

恥ずかしい。

私の顔は、もう真っ赤だと思う。

「じゃあ、雛が俺に食べさせて?」

私にフォークの持ち手の方を向けた先生の行動に、私は観念して、手を出した。

先生の口元へショートケーキを近づけると、パクッと食べた。

「…確かに、食べさせてもらう方が恥ずかしいかも」

ほんのり赤くなった様子が可笑しくて、ついクスッと笑ってしまった。

「本番、楽しみだね」

「私は、恥ずかしいです…」

私の言葉に、高梨先生はクスッと笑った。

私はとても幸せ者なのだと、今日この場で深く感じた。

愛する人が目の前にいて、私のことを理解してくれる両親がいる。そして、あの時私を引き戻してくれた賢さんや、いつも癒しをくれる菜子。

望んだ仕事について、生徒たちからいろんな刺激を受けて充実した日々を過ごせている。

私はなんて贅沢な人生を送っているのだろう…。

ふと、高梨先生と目が合う。

優しく微笑む先生につられて、私も自然と微笑み、もう半分のショートケーキをフォークですくって、自分の口へと運んだ。

上品な甘さが口の中へ広がり、私をさらに幸せな気持ちにさせてくれた。






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