雨上がりの景色を夢見て
実家へのお土産に、ケーキのテイクアウトをして、賢さんにお礼を伝えてお店を出ると、夜空には綺麗な星が散らばっていた。

「ちょっと遅くなっちゃったけど、ご実家の方は大丈夫なの?」

「さっき連絡したら、楽しみに待ってるって言ってました。長居する予定はないですし、顔を見てケーキを渡したら、帰りましょう」

今日は仁さんがまだ帰ってきていないって言っていたから、お礼はまた今度かな…。

「そういえば…さっき店内暗くなった時、大丈夫だった?」

「はい。最初は驚きましたけど…」

そこまで言って、いつもならしばらく手が震えていたのに、さっきは明かりがついてすぐに手の震えがおさまった。

私達のお祝いということに、すごく驚いて、恐怖心がすっかりかき消されたから。

「…良い意味の暗闇、悪くないですね…」

「そうだね。たとえば、天窓から星空を見るための暗い空間とか、お祝いのためとか。そういう記憶に塗り替えていけると良いのかもね」

「天窓…素敵ですね」

星空が室内から眺められるなんて、なんて素敵なんだろう。

「もう少ししたら、ちゃんと家建てようか」

えっ…

「家族が増えたら、狭くなると思うよ?」

それって…

「…雛、子ども好きだよね?」

「はい。でも、何で…」

「菜子ちゃんにもだけど、よく道端とかで赤ちゃんや小さな子ども見かけると、優しい表情向けてるから」

「そんなに顔に出てました?」

「うん。だから、きっと良いお母さんになるよ。病院の先生とも相談しながらだけど…ちゃんと将来のこと考えよう」





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