雨上がりの景色を夢見て
先生の言葉が嬉しくて、胸がいっぱいになるのと同時に、視界が涙でぼやける。

「…私、実は言い出すタイミング、ずっと探してて…でも、先生の負担になったらどうしようって考えると話せなくて」

私の事でさえ負担をかけているのに、育児のことでもさらに負担をかけてしまうのが怖かった。

「自分の子ども、負担に思うわけないさ。育児だって、最初から雛にばっかりに任せっきりにしようなんて思っていないよ。俺だって、ちゃんと手をかけて育てていきたいよ」

先生は穏やかにそう言うと、私の頭を優しく撫でた。

心の中にあった、言い出せなくて苦しかった塊が、少しずつ、少しずつ溶けていく。

先生は、いつも私が欲しい言葉を言ってくれる。

悩んでいることに対して、的確に、安心できるような空気感で。

伸びてきた温かい手が、私の頬を伝う涙をそっと拭いとる。

「さっ、ケーキ届けに行こう」

「…はい」

最後に、自分で涙を拭って微笑んで返事をすると、高梨先生も優しく笑った。

自然とお互いの手が触れて、手を繋ぐ。温もりが、心地よくて、ふわふわとした気持ちになっていく。

「あれ…?」

駅前に差し掛かり、近くの駐車場に止めていた車に向かっていると、高梨先生が、駅前の通路を見て呟いた。
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