雨上がりの景色を夢見て
「あそこにいるの、雛のお父さん?」

先生の視線の先をじっと見つめる。

あっ…

「そうです。仁さんです」

横断歩道の前で赤信号で止まっている仁さんの姿がはっきりと見えた。

「せっかくだから、車で送って行こうか」

高梨先生はそう言うと、軽やか走って仁さんの元に向かった。

声をかけられて驚いた様子の仁さんは、しばらく立ち話をすると先生と一緒にこちらに歩いてきた。

「やあ、雛ちゃん。こんばんは」

「こんばんは」

「賢の所、寄ってたんだって?」

「うん。仁さん、お祝いプレートありがとう。すごく嬉しかった」

素直に気持ちを伝えると、仁さんはくしゃっとした笑顔で頷いた。

「ちょうどね、みんなにケーキ持って行く所だったの。一緒に乗って行って」

「うん。夏樹くんから聞いたよ。ありがとう。お言葉に甘えてそうさせてもらうよ」

仁さんは、助手席に。私は後部座席に乗って、高梨先生の運転で家に向かった。

「最近忙しくて賢のところに行けてなかったんだ。元気にしてた?」

「うん。元気そうだったわ。結婚のことも喜んでくれて…直接会いに行ってよかったって思ってる」

「賢も嬉しかったと思うよ」

仁さんはそう言うと、ネクタイを緩めた。

「お義父さんと賢さんは、とても雰囲気が似ていますね」

「よく言われるよ。でも…賢方が若々しいかな。接客業だからなのかな」

運転席と助手席で、2人が会話している様子を後ろから見ていると、とても不思議な気持ちになる。




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