雨上がりの景色を夢見て
第21章 甘い時間
んっ…

身体を動かした時に、ベッドとは違う固さに、ハッと目が覚めた。

ここ…車…?

「あっ、起きた?」

運転席では、高梨先生がスマホをいじっていて、左手が、私の右手に添えられていることに気がついた。

「もしかして、起こさないでいてくれたんですか…?」

「うん、まあね。気持ちよさそうに寝てたから」

時計を見ると、実家を出てから、ここに着くまでの時間を差し引いたとしても、30分は寝ていたことになる。

その間、ずっと隣に?

「夏樹さんの時間使っちゃってすいません…」

「なんで?俺は、雛と一緒にいられたからまんぞくだよ?」

高梨先生の言葉から、先生の優しさが十分すぎるほど伝わってくる。

「それに、明日は雛、休みだろ?俺も午前中は休みだし、午後から部活動入ってるだけだから。平気」

さらにフォローしてくれる高梨先生に、私はもう一度、

「本当…すいません」

と言った。

すると、先生の手が私の後頭部に添えられて、一瞬のうちに先生の胸板に顔をくっつける形になる。

先生の速い鼓動が、私の緊張感を高める。

「謝るの、なし。俺がそうしたかったんだから」

頭上で聞こえる先生の声。

髪の毛に先生の顔が触れたような気がした瞬間、チュッという音が車内に響いた。



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