雨上がりの景色を夢見て
「雛、一杯飲まない?」

お風呂から上がって、リビングに行くと、仕事が片付いたのか、先生がお酒を作っているところだった。

「サワーですか?」

「うん」

「飲みます」

先生の作るサワーは、割り方が上手で、私が作るものよりもはるかに美味しい。

先生は、もう一つグラス出すと、手際よくサワーを作り始めた。

「俺、さっとシャワー浴びてくるから、先に飲んでて」

「ありがとうございます」

先生は、私にグラスを渡すと、リビングを後にした。

一口の飲んで、ソファーにゆっくりと腰掛ける。

やっぱり、先生の作るサワーはとても美味しい。

ふーっと息を吐いて、今日1日の出来事を頭の中で思い返す。

いつもと変わらない時間の長さのはずなのに、目まぐるしく色々な事が起きていって、あっという間だった気がする。

私自身、先生と深く関わり始めて、こうやって人生を共に歩んでいく唯一のパートナーとなってから、人との関わりが濃くなったと気がつき始めている。

もう一度サワーを一口飲む。

少しだけ口が寂しくなって、何かつまむものでもないかと、立ち上がって冷蔵庫を開けた。

あっ…チーズ。

ブロック状のチーズを取り出して、薄くスライスをする。

このチーズは、先生のこだわりのもので、行きつけのお店でしか売っていないもの。

初めて食べた時の、美味しさの衝撃はいまだに覚えている。


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