雨上がりの景色を夢見て
お酒を一口飲むと、先生はカレンダーをじっと見て、

「再来週の土曜日の午後に土地やモデルハウス見に行く?」

と言って、今度は私の方を見た。

「いいんですか?」

「もちろん。俺達の今後の大事な棲家だから」

立ち上がった先生は、今度はタブレットを手にして戻ってきた。

「実は、きっと雛はこういう静かなところも好きなんだろうなって、通勤にもそこまで支障の出ない場所でいい土地探しておいたんだ」

画面を操作しながら言った先生の言葉に、私はとても驚いた。

「夏樹さん、なんでもお見通しですね」

「そんなことはないさ。今回はたまたま当たっただけ」

ちょっと照れ臭そうに笑った先生は、私にタブレットの画面を見せてくれた。

「この辺りは、車で少し行けば買い物には困らない場所だよ」

「広いですね」

「そうだね。だから、子どもと思う存分走り回れるくらいの庭は取れそうだね」

その言葉に、私の頭の中には子どもと楽しそうに遊ぶ先生の姿が浮かび、ちょっとした妄想が膨らんだ。

そのことが、ちょっと恥ずかしくて、思わず両手で自分の熱くなった頬を包む。

「どうしたの?」

「…ちょっと恥ずかしくなって」

「恥ずかしいって?」

不思議そうに私の顔を覗き込む先生と目が合って、私の体温がさっきよりも上がった。



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