雨上がりの景色を夢見て
トントン

「いいよ」

扉をノックすると、すぐに先生の声が聞こえて、ゆっくりと扉を開けた。

「どうしたの?」

そう言って、私の元へ近づいてきた先生に、私は今から言おうとする内容の言葉を慎重に探す。

「…その…、一緒に寝てもいいですか?」

「うん、もちろん。おいで」

私の言葉にニコッと笑って、私に中に入るように促した先生。

私の肩に手を添えて、そっとベットに座らせると、部屋の明かりのリモコンを手に取って、オレンジ色の灯りへと調節する。

「夏樹さん…」

「うん?」

「…暗い部屋で寝てみようかなって思います」

「えっ?」

私の言葉に驚いた先生は、リモコンから私の顔へ視線を移す。

「…大丈夫?俺に気を遣わなくてもいいんだよ?」

私は、先生の言葉に首を横に振って、言葉を続ける。

「夏樹さんと一緒なら大丈夫だって、今なら思えるんです」

暗闇になっても、先生がそばにいるという安心感が、今の私に心強い。

ふわっと先生の温かい手が私の頭を撫でた。

「無理だったら、正直に言える?」

「…はい」

「絶対に、我慢しない?」

「はい…」

「じゃあ…、消すよ?」

先生は、リモコンを操作して、部屋の明かりを消した。


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