雨上がりの景色を夢見て
夏奈のベッドの横のテーブルに置きっぱなしだった自分のスマホを手に取り、ポケットに入れる。

『…隠すなよ』

そう言って、すぐ近くの椅子に座って、ゆっくりと息を吐いた。

『夏樹、早く家に帰って、採用試験の勉強しなよ』

座った俺に、強気でそう言った夏奈。

『大丈夫、今日はもうやってきた』

俺も負けじと、夏奈の目を見て言い切る。

昨年、大学四年生の時に受けた教員採用試験は、不合格で、結果がわかってから、毎日必死で勉強してきた。

夏奈の病気がはっきりと分かったこの時期は、試験本番まであと1ヶ月半を切っていた。

『…夏奈は、強がりすぎ』

俺の言葉に、ベットの上の夏奈の手に力が入り、ぎゅっと布団を握った。

やべ、言いすぎたか?でも、こうでもしないと、絶対気持ちを言ってくれない。

そっと夏奈の表情を伺うと、目に涙を浮かべて、俺を睨みつけていた。

『…っ…仕方ないじゃない』

震える声で、夏奈が呟き、一度長く息を吐いて、話を続けた。



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