雨上がりの景色を夢見て
「雛ちゃん、夏樹の好みのタイプなはずなんだけどな」

座椅子寄りかかって、ゆらゆらと揺れながら、俺の表情を伺う夏奈。

「…勝手に何言ってんだよ」

「黒髪ストレートで、目は大きめ。色白で、細身だけど、身長がそこそこある。ちょっと強気な雰囲気もあるけれど、可愛い一面もあり、そのギャップがまたグッとくるってとこ?」

悪戯っぽい笑顔を向ける夏奈。

俺は備え付けの冷蔵庫に手を伸ばして、缶ビールを手に取って開けると、一気飲に飲み干した。

「専門家みたいな分析するなよ。そもそも中川先生に失礼だから」

中川先生のことは、正直美人だと思う。けれど、そういう目で見たことはないし、そもそも歳が離れすぎていて、お互い対象外だと思う。

「年齢差、理由にならないわよ?」

えっ

俺の心が読めているかのような夏奈の言葉に、一瞬ドキッとして、イカに伸ばしかけていた手を止めて、夏奈を見た。

「図星?」

「そもそも、そういうのじゃないし」

平常心を装って、そう言い切り、イカを手に取った。

嘘はついていない。

中川先生はただの同僚だ。

ある意味、気になる存在ではある。なんとなく、中川先生も誰にも言えない悩みを何か抱えているような気がするから。










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