パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
 突然の貴堂の質問とキャプテンの回答にえっ!?という空気が流れる。

「大丈夫なんですか?」
 女性同士で来ていたグループからも質問が出た。

「大丈夫です。方角は計器でも把握していますから。人の感覚だけでは当てにならないかもしれませんが、それを補うための計器がこれだけありますからね」

 そうして潜水艦の中は和気藹々とした空気になり、みんなもキャプテンに質問したり、キャプテンもそれに楽しそうに答えを返したりしていた。

 その後は二人で海の中を見てカラフルな魚たちや綺麗な珊瑚に感嘆の声を上げたり、微笑み合ったりしたのだ。
 紬希には初めてのことばかりでとても幸せな気持ちになった。

 浮上したら貴堂はキャプテンに声を掛けられる。
「ありがとうございます。おかげで楽しい雰囲気になりました」

「いえ、こちらこそとても興味深いお話をたくさんありがとうございます。沖縄は何回か来ているけれど潜水艦は初めてだったので大変面白かった」

 そんな会話を聞いて、紬希は驚く。
「あら、初めてだったんですね」
「うん。あることは知っていたけど乗船する機会がなくて。今回経験できてよかったよ。とても楽しかった」
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