パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
「うん」
 貴堂は手を繋ぎ直して返事をする。

 そんなに綺麗なものを二人一緒に見られる幸せ。


『約束を交わし、制約を背負うことで、人は覚悟を示し、信頼関係を強めることができるのだそうです。その信頼関係が安心感を強め、心の共鳴や理解を促進し、関係性が強固になるという効果を生みます』

 紬希の心にはそんな貴堂の言葉が蘇った。
 その言葉で紬希は貴堂と交際することを決めたのだけれど、今はお互いを思いやることが関係性を強固にしている。

 それは交際を始めた当初よりも、もっと進んだ関係のように思えた。

 そうして、そんな信頼関係こそが紬希をこうして外の世界へと導いてくれた。

 ふわりとプールサイドを撫でる風を感じて、貴堂は紬希を抱き寄せる。
「こっちにおいで。風が……」
「ありがとう」
 そう言った紬希が柔らかい笑顔を貴堂に向ける。

 小さな顔に、綺麗に配置されたパーツ。
 大きな瞳、小さな鼻と可愛らしい唇。決して派手な顔立ちではないけれど柔らかくて、儚げで貴堂の大好きな顔。

 そして今はそれだけではない紬希の素直さも強さも知っている。さらに恥じらう姿も、甘い声も、意外なほどの色気を湛えた姿も。
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