パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
「いや。僕には紬希らしくてとても良かった。紬希の色んな姿を見る度に僕は……自慢して歩きたくなったり、僕の腕の中に閉じ込めておきたくなったりする。空を飛ぶこと以外にこんな風に気持ちを持っていかれるのは紬希だけだ」

 紬希にだって、貴堂は他の誰よりも安心を与えてくれる人であり、貴堂がいてくれたからこんな風に旅行にまで行けるようになった。

 紬希は頬を撫でている貴堂の手の上から自分の手をそっと重ねる。

「一年前なら、こんなところに自分がいるなんて考えられませんでした。誠一郎さんがそばにいてくれるから私は動けたんです」

 きっと、紬希ならいつか自分の力で外へ出ていくこともできただろうと貴堂は思う。
 それでも、自分の手を取ってくれたことに、貴堂は喜びを感じるのだ。

 美しくて儚げでありながらしなやかな強さをきちんと持っている人。

 紬希は貴堂を見上げる。
 頼りがいがあって、いつでも紬希を認めてくれて見守ってくれて、愛してくれる人。

 視線が絡まって、どうしようもなく顔が近づいて、二人の唇がそっと重なった。


 遠くから聞こえる波の音と、優しい風、降るような星がそんな二人を包み込んでいたのだった。



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🧸長らくお付き合い頂き、ありがとうございました(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)💕
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