見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

「いいお相手よ。あなたと同じ歳で、大きな会社の部長さんなんですって。将来有望だし風貌も悪くないし、お人柄も」

「ちょ、ちょっと待って。私まだお見合いするなんて言ってない」
「もう決まってるのよ。ねえお父さん」

 母の問いかけに、向かいのソファに座っている父が、重々しくうなずく。

「お父さん、お母さん!」
「明花、おまえも今年で29だろう。いいかげん、いい相手を見つけて結婚するべきだと思わないか」
「お……思わないわけじゃないけど、でもそのうちにって」
「そのうちそのうちって、ちっとも家に連れてこないじゃないの。どうせ今は付き合ってる人もいないんでしょう?」

 うっ、と思わず口ごもる。それは事実だから返す言葉がない。

「で、でもいきなりお見合いなんて。せめてもっと早く話をしてほしかったわ」
「早めに話したら絶対断るだろうと思ったのよ。あなたは人見知りするから」
「どうせ今は相手がいないなら、見合いで出会ったってかまわないだろう。何が困るんだ」

 母と父のごもっともな言い分に、また口ごもってしまう。
 お見合いに対して、なんとなく覚えてしまう苦手な感覚は、たぶん「あなたは若いから」で片付けられてしまうのだろう。私自身、はっきり説明できる感覚ではないから、両親を言い負かせるとは思えない。
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