見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
ひと通りの挨拶を終えた後、双方の両親が『積もる話もあるだろうから二人で庭の散歩でもしてきなさい』と言い、坂根さんも同意したのだ。
積もる話はあった。それはもうあふれ出しそうなほどに。
だって、見合い相手が昔のご近所さん、かつての幼馴染だなんて──誰が予想するだろうか。
「見合いするの嫌やったん?」
「う、……ん、まあ。正直、気乗りはせんかった」
「なんで?」
私の顔をのぞき込む格好で、坂根さん──稔くんは尋ねてくる。
「結婚て、無理やりするもんやないやろ? 親が乗り気な分、なんか、気分が盛り下がるっていうか……」
ぼそぼそと口にする私の言い訳を、稔くんはうんうんと相槌を打ちながら聞いてくれている。
思い返せば子供の頃も、こんなふうに静かに、私の話に耳を傾けてくれたっけ。
稔くんは、昔は宮本稔幸という名前だった。小学6年生まで。
そして同じ時期まで、私と同じ町内に住んでいた。幼稚園も小学校も、そして登校班まで一緒の、ご近所さんだったのだ。
早くにお父さんを亡くして、お母さんと二人で暮らしていた。幼稚園で同じ組になった年少の頃、同い年の母親同士がママ友になったのをきっかけに、私と彼も遊び友達になった。その関係は小学校に上がってからも続いた。