見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

 けれど中学に入る少し前。稔くんは引っ越すことになった。
 お母さんの再婚が決まった、と近所で噂になっていた。相手は結構な資産家だとも言われていた。おそらくは嫉妬混じりに。

『一緒に中学行けなくてごめんな、はるちゃん。元気で』
『……稔くんも、元気でね』

 お互いに「元気で」と何度も言い合って、握手を交わして別れた。
 あくまでも友達同士だった私たちには、それ以上のことは何もなかった。

 ──ほんの少し、芽生えかけていたかもしれない想いは、まだ自覚する前で。
 初恋とも言えない淡い感情は、育つ前に止まってしまった。

 それから、十数年が経って。
 こんな形で、こんな立場で再会するなんて。

「だから、写真も釣書も見てなくて。稔くんが来るなんて全然思わんかった」

 ごめん、と頬を押さえて言うと、稔くんはゆるくかぶりを振った。

「謝らんでええよ。俺も、最初に話聞いた時はあんま、気が乗らんかったし」
「……え」
「けど、相手がはるちゃんやって聞いて、会ってもいいって思った。ていうか、会いたいなって思った」

 笑いかけられた瞬間、心臓の音が耳元で聞こえた気がした。
 子供の頃も可愛い顔をしていたけど、ここまでイケメンに育つなんて反則だ、と思う。
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