見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

 苦笑混じりに稔くんは話す。
 うっすら気になっていることを尋ねてみた。

「彼女とか、好きな人とか、おらへんの?」
「残念ながら今はおらんねん。せやから余計になあ、親の言うこともまあもっともかなって、思わんでもなくて」

 大手会社の社長の家って、そういうものなのかな。
 実子ではないのに──いや、実の子供でないからこそ、かもしれない。

「そういえば、稔くんってきょうだいは」
「妹が二人おるよ。けど歳離れてて、まだ中学生と小学生やから」

 なるほど。だから余計に、年長者としての使命感と、実子でないことへの遠慮を感じているのかもしれないな。そんなふうに思った。

「そやけど、あからさまな政略婚とかはしたくないんや。一緒に暮らさなあかん相手がたいして好きでもない女やったら、ちょっとアレやろ?」
「……まあ、確かに」
「せやから、どうせなら気の許せる子がええなあって思って。はるちゃんやったら昔馴染やし、知らん仲とちがうし」

 いいアイデアを思いついた、という表情で稔くんは言う。
 けど。
 ──私なんかが相手で、彼はいいのかしら。

 昔馴染、幼馴染とは言っても、15年ぐらい会わずにいた間柄だ。
 その間に、稔くんの知っている「はるちゃん」と私は、だいぶ違ってしまっているかもしれない。
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